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超売れなさ過ぎるデジタルカメラの販売から身を引いたワケ

デジタルカメラの市場は、もはや風前の灯火となりました。

 

小型で写りが良く、性能もどんどん向上し夜景も手持ちで写せる上にズームも出来る。

価格帯も幅広く様々なニーズに答えられる上に配送もほぼなく持ち帰れる、ビジネスにもコンシューマにとっても非常にメリットのある商品がデジタルカメラでした。

 

ただ、コンデジは様々な点でスマホに淘汰され、徐々に販売台数を落としていきました。結果、数よりも価格で攻める、従来のフィルムカメラのような立ち位置になりました。

 

ただ、それにつけてもカメラ業界はどんどん悪手へと進んでいく一方です。

何故にここまで売れないのか。

 

それは、元々カメラが持つ特性と一般的な感覚を持つ人たちのズレが大きくなったのだと、僕は思うのです。

 

このブログでは、飽く迄個人的な観点による、デジタルカメラの販売に大学生の頃から10年近く関わっていた僕の視点で、何故販売員を辞めたのかと同時に、どういうズレがあったか、を語りたいと思います。

 

ちなみに、僕はカメラが好きで、今でも情報サイトで暇があればニュースを追っかけてる程です。

あくまで販売と分けて捉えていただければと思います。

 

 

離れた理由1:もともとマニアックな分野である

まず、そもそもカメラ自体、元々メジャーなジャンルではありませんでした。

市場でも高額で、フィルムは失敗が出来ないので、完全に趣向品の世界でした。

そのため、買うのに入念な見定めがいる、即決出来ない世界でもあります。

接客で売れない訳ではありませんが、財布の紐を緩めるには様々な小ネタが必要になります。

 

そこでデジタルカメラが1990年代に登場します。

素数は65万画素に対してフィルムカメラは当時換算では約1000万画素と言われ、解像度では明らかな差が出ていました。

ですが、半導体の進化は凄まじく、画素数もズーム倍率も保存容量もますます伸びていきます。

カラバリやデザインが豊かな物になっていきます。

何よりも、デジタルカメラは失敗が少ないです。

液晶で結果がすぐに見れ、失敗すればすぐ消せる。フィルムみたく撮影枚数の制限は実質ほぼありません。

プリンタやパソコンの性能も上がり、HDDやメモリ容量も増え、保存も印刷もお手軽になり、デジタルカメラ一家に一台あってもいいようなカジュアルなものへ昇華しました

 

それに対してスマホが代等し始めました。

スマホの性能アップが如実に見え、需要、つまり気軽に取れて誰もが持つようなカジュアル路線のコンセプトは、スマホへと移り変わり、カメラは再びマニアック路線に立ち直りました。

 

結局、カメラはカジュアル路線を意識しても、どんな物も綺麗に撮れるという枠組みが崩れることは無かったのです。

 

数を稼ぐ、というスタンスは、マニアックな市場で長生きするには難しい手法だったのです。

 

 

離れた理由2:信者と言う客層

これはカメラの業界によくある話だと思いますが。

ちなみに、カメラ業界は意外とネチネチとした業界だと思います。僕は。

特に思うのはレンズマウントです。

 

各メーカーでレンズは出ていますが、これらは基本そのメーカーの決まった規格のカメラでしか使用出来ません。

アダプターを使えば各規格を超えて使えるものの、初めたての人はそのメーカーのレンズを買い揃える物です。

 

また、レンズマウントはメーカーの設計コンセプトが現れた規格でもあります。

そのメーカーでどんな方針でカメラやレンズを作っていき、市場に浸透させていくのか。

そして、ユーザーにどんな写真を撮ってほしいのか。

マウントとは、メーカーだけでなく選び手のユーザーの思想が垣間見える規格にもなります。

 

ただ、これに惚れ込み過ぎた人達がいます。

そう、信者です。

 

これがまた厄介で、一度その規格やレンズに惚れ込んだ場合、他の規格に抜けられない上に、他のメーカー品を批判したりするわけです。

 

また、その規格に惚れこんでいるということは、簡単に手放す事がありません。

要は買ってもらうのに時間が掛かるか、もう買わないかなんです。

 

消費者にとってはレンズは資産です。

マウントそのものがその人にとっての買って使っている理由=人生観も表しますから、そこにアプローチするのはかなり骨が折れる作業です。

 

また、口コミサイトなどで信者による批判があるとそれを見たライトユーザーは不安に思い買わないなど、悪循環が巻き起こることも。

やいのやいのうるさいカメラなんて、普通の人は買っても自慢に出来ない、そんな事だってあるわけです。

 

そういう意味でも、前述した通りカメラはマニアックで数で稼ぐジャンルではないと言えます。

いいカメラが欲しいけど、騒ぎのない安定感のある商品が欲しいのが普通の心理です。

 

 

 

離れた理由3:ファッションアイテム化

これは店頭に立って実感した事でした。

特に若い方や女性のお客さんがそうなのですがカメラのサイズや色ばかり気にする人がいるんです。

個人的には最初意味がわからなかったです。

まあ、僕が気にしなさすぎなのも問題だったんですが……

そもそも、何で色味やデザインが大事なんだろうと。写すものなのに何で外観が必要なのかわかりませんでした。

 

そこで気付きます。デジタルカメラは服やアクセサリーと同じ立ち位置なんだと。

自分にどれだけ合うのか、カメラが如何に自分を立たせてくれるかが大事になんです。

そのためには、カメラの能力とかも前評判から聞いていた上で、どれだけ自身のスタイルを立たせられるかが消費者意欲に駆られるポイントになっているんだと。

 

だからよくカメラアクセサリーなんかも多く発売されましたね。特に肩下げポーチみたいな皮のやつが。

カメラを蓋みたいに仕舞えるやつとか。

ストラップもメッチャカジュアルになったりとか。

 

ここら辺がどうも僕の中でしっくり来ないところで、当時の僕の考え方とそこが合わなさ過ぎたのも離れた要因です。

 

そこまで僕は、カメラは写して綺麗に残すもの、と言う根本の考えがありました。カメラはカメラなんですから、と。

 

今ではファッションアイテムの考えも納得出来るのですが、当時はそこがどうもしっくり来ていなかったですね。

 

もっと言えば、服屋に来てよくお似合いですー、なんてやり方をカメラに求められるワケで。

こう言うと、やっぱり今でも違うなぁと感じてしまいますね。

 

 

離れた理由4:比較が難しすぎる

カメラの性能は、どんどん横並びになって行きました。

ズーム倍率が激化したり、タッチパネルが搭載されたり、レンズ性能でf値が大事と独り歩きしたりで、どんどんメーカー毎に売りが重なっていっていきました。

そうなると、次に起きるのが思考の放棄です。

 

この間どこかで見ましたが、人は情報が多い物よりも、少ないものの方が購入に走る傾向があるんだそうです。

10種類以上のジャムより、3種類のジャムを比べた時の方が購入の割合が高いとの事です。

少ない方が比較もしやすく、判断もつけやすいため、答えが見つけやすいのかもしれません。

 

ここで全盛期のデジカメのラインナップをざっくり思い返しますと、確か各メーカー含めて全体で約80機種近くありました。

そりゃどれがいいかなんて分からんわ。

しかもコンセプト別に各メーカー対抗機種を出すもんだから、高倍率モデルでおよそ10機種、低コストモデルなどでも10機種、防水は少なかったとはいえそれでも4〜5機種あったときも。

 

だから口コミサイトなどがどんどん人気が出て、一気に成長を遂げたんでしょうね。

比較自体が難しすぎますから。

購入者の情報がソースになるわけで。

もっとも、その口コミユーザーが本当に購入したかは定かじゃありませんが……

 

僕もいちメーカーの販売員として立っていた時、そこは悩みました。

メーカーでカメラを買って比較するなんて、予算もないのでいちいち出来ないからです。

敵に塩を送ることにもなるわけですし。

全機種くまなく比較できるわけありません。

 

実際に触れるのは店頭だけですし、カタログスペックの数字で比較しても感性でこっちが良いと思うことだってあるわけです。色味やデザインなど。

しかもカタログスペック以上に強みを持たれたらそれこそもっと比較は複雑です。

 

そう。

販売員ですら比較した案内が難しいんです。

 

 

離れた理由5:必需品の性能アップ

一番影響のあった変化の中でも、ケータイの性能が上がりすぎてしまった事に触れないわけにはいきません。

 

元々何でデジカメを買うかといえば、普段使ってるケータイのカメラがしょぼかったから。正直これにつきます。

 

元々はフィルムカメラよりも安価で手が届きやすい所からデジカメは始まりました。

ケータイも出てきて、その内臓カメラが先に進んでいたデジカメに比べレンズやセンサー、エンジンなどの基礎部分でかなり劣る形で差がついていました。

そこにさっきのデジカメシェアの激化した奪い合いをしてる間に、主に海外のスマホメーカー(特にapple)が内臓カメラの性能を上げてきた為に、デジカメの販売台数そのものが下がっていきました。

カメラのパーツやレンズの明るさ、撮影機能などの売り方がデジカメと同じになっていったのです。

 

よくガジェット系の雑誌でも、スマホのカメラ性能で取り上げられるのは大抵が海外メーカーです。

Appleに始まり、HuaweiSamsungGoogleなどなど。

唯一知られている国産メーカーではSONYくらいでしょう。

 

そうしたら普通のデジカメでは売れなくなります。ただ取り出してすぐに撮るだけならケータイの方が圧倒的に早いからです。

 

そこで高倍率や防水などの高付加価値で走ろうとなるわけですが、結局スマホでも高倍率が出来たり、本体に防水も備わりました。

その結果、デジカメ=マニアックな特化型、かつ高画質な路線に絞られてしまったわけです。

そこまでしなければ、必需品のスマホに勝てる明確な売りがなくなってしまったのです。

 

言うて、僕も最近はスマホでしか写真を撮りません。

カメラの良さは十分にわかっていますが、持ち歩くシーンがあまりないからです。

それこそ、ぼかした写真とか、すごい接写とか、綺麗な夜景を撮りたい時もあります。

 

ただ、諦めがつくんです。

持っていないから、とか、ある程度スマホでも撮れるし。と。

しかもそこそこ綺麗だし。僅か数ミリのボディでそこそこ撮れてしまうのです。

 

僕がカメラの販売員が実感してしまうのでは、カメラを販売する身としての意識も薄れてしまうのです。

値段の高い必需品と、値段の高い趣向品。どっちを選ぶかって話ですよね。

 

 

後書き

完全に愚痴のブログになってしまいました。

ただ、何かしら何処かでこの気持ちを吐露しないと、自分の中で区切りをつける事が出来ないような気がしたのです。

 

このブログを書いてる時点でもカメラメーカーから様々なマイナス要素を持ったニュースが飛び込んで来ます。

 

それは、一眼のような高単価商品がメインになった今ですら、業績の下方修正を出さなければいけないほどです。

 

それらを受けて、また僕自身も疲れたこともあり、一度この気持ちを何かにまとめておかないと、何故にカメラが売れないかをわかってもらえる機会もないのではと感じたのです。

 

もちろん、これは僕個人の一視点にしか過ぎません。

ただ、それを知ってほしかっただけなんです。