アニメ会社が自社アニメをYouTubeで無料公開するワケ
最近、特に多くなったと思うんです。
何をって?地上波アニメをです。
しかも無料で。もちろん期間限定ですが。
昔ではこんなことあり得ませんでした。
アニメの主戦場はテレビであり、メディア販売によるシェア拡大だったはずだからです。
少なくともこの4つの企業は自社チャンネルにてかつて地上波で放送されていたアニメを自主的に公開しています。
この活動について、何の目的があるのか。
全く個人勝手に、個人の主観で、推察していきたいと思います。
- TV市場のコストダウン
- チャンネル登録者数の釣り上げ
- 地方問題やOVA発掘の解決
- IP権利の再主張
- リアルイベントに絡める
- YouTubeユーザーのTV使用率の増加
- ルパンやガンダムのあと追いを狙う
- あとがき
TV市場のコストダウン
再放送するにも今地上波のテレビでアニメを見ないですよね。
地上波の再放送すらスマホアプリ、権利を買い取る放送局もいない状態です。
今では夕方にアニメをやったり、地上波の再放送をやるにも、その放送枠がとことん削られてしまいました。
要はお金を掛けずにテレビ放送をする時代なんです。
その時代の中、元々お金を掛けずに作っていたアニメは、さらに拍車をかけて立ち位置も狭く、どんどん枠が削られていったわけです。
そうなると、自分達の作品や、権利も活かしたビジネスが展開できなくなります。
そこで、舞台をネットの、一番流れが活発なフィールド、YouTubeに移し始めた。となっているのが今の流れです。
チャンネル登録者数の釣り上げ
YouTubeを通しての広告収入はバカにできないようです。
もし、ブルーレイでの実販が厳しくなっても広告収入でカバー……仕切ることは難しいでしょうが、簡単な操作で赤字を少しでも埋められるなら企業でもやりますよね。
ちなみに、魔動王グランゾートと魔神英雄伝ワタルは、元々同じ制作会社=サンライズのアニメでありながら、別々のチャンネルで投稿されています。
サンライズは今はバンダイの傘下企業で、ワタルは独立してホビー展開を行なっていますから、その兼ね合いで分けて展開してるものと思われます。
また、バンダイや関連チャンネルへのリンクを付けて相乗効果で登録者数上げる施策も含まれてるようです。
だって、サムネイルの作り方がほぼ同じパターン化されてるんですもの。
これはガンダムチャンネルのサムネイルにも共通して言えます。ガンダムもサンライズ作品ですよね。
恐らくサンライズ内で、担当者ないし管轄部署が同じグループで投稿されてるんでしょうね。
また、バンダイチャンネルでもホビーに絡めて動画投稿をしているおかげで投稿自体て宣伝も兼ねられるので、宣伝費削減にもなります。
動画視聴と同時に宣伝もでき、さらに広告を挟めば収益も得られる。いいビジネスですね。
地方問題やOVA発掘の解決
主に再販が難しいVHS作品群の解決策になります。
この間、手塚プロダクションのチャンネルでブラック・ジャックのOVAが公開されていました。
90年代前半から発売されたVHSの頃の作品ですが、出崎統監督演出のカットが多く含まれ、またOVAだからこそ扱える過激なテーマをコンセプトにした、まさに手塚作品に見られるテーマの重さをよりリアルに表現した非常にいい作品でした。
ただ、残念ながらこういうマニアックなOVAは、今のご時世販売しても儲かる時代じゃありません。
販売してもそもそも知名度的に、需要的にも儲かるものでもないでしょうし。
そもそもブラック・ジャックは知っていても、90年代にOVA作品があったと、何人知っているのでしょう。
次に、ローカル問題です。
個人的に再熱してる魔神英雄伝ワタル。
ただ、私はリアルタイムでワタルを地上波で見た事がありませんでした。
うちのド田舎じゃ地上波で見れなかったですし、VHSでいつも親にレンタルしてもらってました。
また、そのローカル局のアニメチョイスと時間帯が本当にセンスないんです。
キン肉マンが朝7時半から流れたり、エヴァが日曜の12時から流れるようなアニメ枠しかありませんでした。
しかもエヴァは本放送から2年後ですよ!マジでセンスがないと言える。
中学の頃にはラブひなのスペシャル番組があったんですが、わざわざ親戚にVHSで撮って送ってもらったくらいのローカルっぷりです……
これらの問題も、動画投稿によって解決できます。
スマホさえあれば、誰でもこのOVAが(常時では無いとはいえ)見られるいい時代になったわけです。
そのついでに広告収入が得られればどっちも得出来ますし。
IP権利の再主張
これらの活動は実際には非公式に行われていました。
要は海賊版が出回っていたわけです。販売ではなく配信で。
それは活躍の場が、テレビとネットで離れていたために黙認に近い状態でスルーされてきましたが、今は既に流れが変わりました。
プロが、趣味・アマチュア・セミプロの舞台にビジネス利用のためにカチコミに来たわけです。
権利者が投稿する事はつまり、海賊版への威嚇行為でもあると言えます。
勝手にコピーした動画に広告付けて収入得てるチャンネルへの牽制、意欲の抑制もあるでしょう。
ネットが主流になった時代で、海賊版と同じ行為を敢えて公式がやる事で自分達の作品なんだと世に知らしめることができます。
手塚プロダクションも、最近はアニメ制作というより、権利ビジネスを中心にした活動で収益を出しているようです。
リアルイベントに絡める
グッズの再販や展覧会で長期の作品展開を図る
リバイバルビジネスを手掛けるきっかけ作りになる
最近はグランゾート、ワタルなどの玩具が再び発売されたり展覧会が催されるのに合わせて動画が期間限定で投稿されてました。
もし、視聴者がリアルイベントやグッズ展開を知らないファンだったとしても。
その動画を機にアニメ熱が再燃して当時世代だった大人が興味を示してくれるかもしれません。
YouTubeユーザーのTV使用率の増加
家族で見られる、と言う要素は非常に大事です。
ここ最近はYoutube側の規制が一段と厳しくなりました。
少しでもアダルトに取られる要素が含まれたり、暴力的な表現が含まれると、それだけで収益化が外されたりします。
どうやら話では、子供が楽しめるコンテンツを意識した規制が掛かっているのではと見られています。
生憎私には子供がいないのですが、最近はTVでもYouTubeを見る割合が多いようですね。
そのために、子供でも見られるコンテンツ作りがポイントになっているようです。
ここで90年代の地上波アニメを思い返すと、見事に子供を意識した作品が多い事に気付きます。
トムスエンタテインメントの名探偵ホームズ、コロコロコミックの爆走兄弟レッツ&ゴーなどなど……
過激で大人向けの近年のアニメよりも、無難に仕上げる事で動画コンテンツとして削除される要素を含まない作品ばかりです。
しかも、それをコンテンツの管理側=企業が展開しているので、通報による削除もない。
また、家族で見られる作品を展開することで登録者数と同時に世代を越えて作品の認知を上げられます。
再放送のために放送局へ販売すると言うコスト、人件費も削減できます。
ルパンやガンダムのあと追いを狙う
今では誰でも、名前を聞いたことはないほどのこの名作。
ヒットした理由の1つが再放送にあったと言われています。
まず機動戦士ガンダムは、当時のロボットアニメとしては玩具や視聴率が思った程に振るわず、話数短縮により放映終了。
当時リアルタイムで見ていた人達が再放送を要望する事により、マニアックな作品が社会現象になるほどのきっかけになったと言われています。
ルパン三世も、初代は当時アニメと言えば子供のものだった所に大人の世界観や雰囲気を打ち出したアニメ作品でした。
ですが、リアルタイムではあまり人気が出ず僅か23話で打ち切りに。
そこから再放送時に人気が爆発し、第二シーズンへと繋がったようです。
つまり、昔のアニメを再放送するその目的が、新たにロングスパンで数十年に渡って引き継がれるビジネス展開を目論んでいるのです。
……大げさか。
まあ、ただそんなでかいビジネスを狙っていないにせよ。
今後の日本のために、作られたアニメ作品を陳腐化させずに世代を超えて引き継いで行くという、その狙いは間違っていないのではないかと思います。
あとがき
私が大学にいた時に、某放送局の方が特別に来て下さり、講演が行われました。
正直あまり内容は覚えていないのですが、テレビ業界もあまり儲かっていないと言う話は妙に頭に残っています。
それが約15年前です。
その時点でお金がないと嘆いたまま来たのが、今のテレビ局なんだなと改めて実感します。
新たなビジネスを始めた、日本のアニメ制作会社の活動を、私は正しいと思います。
新たなビジネスを日本が見いだせないのなら、そこに付随する外資企業のビジネスを参考にして学んでもいいと思うのです。
また暇つぶしになれるブログになれたら幸いです。
良ければまた別のブログ記事もご一読いただければと思います。